「一口ちょうだい」の人
ある界隈の知人で、少し苦手な人がいた。
その人はいろんな人に積極的に絡んでいくフレンドリーな人。
私は特に密な絡みはないけど、機会があれば話くらいはする知人。
その界隈には、私の仲良しで大事な人がいて、その人とその人も知り合い。
わかりにくいので仮名を付けます。
私の苦手な人を「I氏」(男性)
私の大事な人を「Qちゃん」(男性)
とします。ネーミングに深い意味はない。
Qちゃんはその界隈ではちょっと有名人で、将来を期待されている人。
Qちゃんのそれにいち早く目を付け、仲良しアピールをするかのようなI氏。
Qちゃんに絡める隙を見つけてはQちゃんを誘って何かを実行。
I氏は「これ、一緒に行こうよ」とSNSに堂々と書く。公に書くからQちゃんは断らない。Qちゃんにとっては別にどっちでもいいみたい。
少しでもQちゃんと過ごしたい私は嫉妬する。I氏の行動が許せない。
私はI氏が嫌いというより、Qちゃんの時間を奪っていくことが嫌いだった。
Qちゃんの私への割り当て時間が減ってしまう。
と、ここまで書いて、
子ども同士の狭い人間関係の小さないざこざみたいだな〜なんて思っている。
ちょっと情けなくて恥ずかしい嫉妬。
だからこそ、Qちゃんにも「I氏ってすぐQちゃんを誘うよね」などとチラリと言うくらいで、大っぴらに嫌悪感を示したりはしていない。
共通の知人だから、Qちゃんとの話題にもよく上がるしね。
今日も、Qちゃんのある行動に、I氏が便乗してくっついていったようだった。
それにはQちゃんの他にも共通の知人が数名参加しているが、I氏は関係者ですらない。
だから、今日のQちゃんからの「なぜかI氏もいる」という報告に私はイライラ。
ただ便乗しただけでなく、意見なども述べ、関係者枠に強引に入っていったように見えた。
Qちゃんは気にもしていないようだけど。
それで気付いた。
私、I氏のことくっきりはっきり明確に嫌いだと。
何が嫌いって、「一口ちょうだい」とおねだりして一口もらって満足したら、また隣の席で「一口ちょうだい」とおねだりしているようなところ。
カフェなどで友人同士別々のものを注文して、一口ずつ交換することがある。
私はこの行為は嫌ではない。よく知らない人にされたらドキッとするけど。
これはギブアンドテイク。
I氏のそれは、一方的にもらうだけ。
私は三人兄弟の末っ子のため、「一口ちょうだい」をして育ってきた人間である。
末っ子に言われればつい与えてしまう。あげたくなくても親をはじめ周囲からそれを促され、あげるしかない状況に立たされる。子どもの兄達だって、全部一人で食べたかっただろう。それを妹の私に甘えられば必ず一口取られてしまう。サイアク半分。三人兄弟だから3分の2消えることも。
兄達には申し訳ないことをした。私も大人になり、その行為が甘えでしかないことをよくよく理解した。
私は末っ子だからこそ、もう「一口ちょうだい」はしない。
「一口ちょうだい」を断る大人はほぼいないことを知っているから。
私も相応の何かをきちんと提供できる状況にあれば「交換っこ」はするかもしれない。
でも「一口ちょうだい」はダメ。絶対にダメだ。
I氏は所構わず「一口ちょうだい」をする人である。
やはり周りの人は、一口くらいあげてしまうし、甘えられて一口提供したことを気にも留めていない。
おそらく私も「一口ちょうだい」されたら、あげざるを得ないのである。
一口あげないことは、とてもケチに見えてしまうからである。
たった一口。
されど一口。
私は「一口ちょうだい」には慎重です。